胆石の治療法

現在の胆石の治療法は、大きく分けて2つあります。それは胆嚢ごと取ってしまう方法と、胆嚢を残し、中の石だけを溶かしたり取り出したりする方法です。
しかし、間違えてはいけないのが、胆嚢の中に胆石が見つかったからといって、必ず胆嚢を切除したり、胆石の溶解をしなければならないわけではありません。
前にも触れましたが、胆嚢の中には、サイレントストーンなどの、痛みを伴わない無症状胆石があり、これらは一生涯、胆嚢の中に収めたままでも、何も悪影響を及ぼさないものも多いので、治療の必要もありません。
治療が必要なのは、痛みがある場合のものだけです。それをふまえたうえで、どちらの方法を取るかは胆石の大きさや種類、それから個人差によっても変わりますので、信頼できる医師に相談し、自信が納得のいく治療法を選択する事が大切です。

胆嚢除去

胆嚢の摘出手術には二種類あって、スコープを使った腹腔鏡下手術と開腹手術の選択がありますが、胆石の大きさによってどちらを選ぶかが決まります。そこまで大きくないものでしたら腹腔鏡を使ったものが現在の主流ですが、胆石が5cmを超える大きいものや、胆嚢が炎症を起こしていたり、周りの臓器を巻き込んでいる場合などには開腹手術が行われます。ですから、最初のアプローチとして腹腔鏡下手術を検討し、それが無理なようであれば開腹手術を考えるといったような流れが一般的なようです。

腹腔鏡下胆嚢摘出手術

この手法は、現在の胆嚢摘出術のなかで、一番用いられているもので、傷口が非常に小さくて済み、術時間も短く、体に負担が少ないことから、すぐに退院が可能で社会復帰も早いというメリットがあります。

具体的にはまず、へそに内視鏡を入れるための約1cm程度の穴を開けて、その脇に2~5mmの穴を1つないし2つ開けます。そして、へそに入れた内視鏡で中の様子を見ながら、脇にあけた穴から器具を差込み、胆嚢を切除したあと、へそから胆嚢ごと胆石を取り出すという方法です。
この方法だと早ければ日帰りができるほど、体への負担が非常に少ないことから、胆嚢の摘出を考える場合には、まずこの方法が選択されます。
以前までは非常に小さい胆石にしか対応できていませんでしたが、最近では、ミキサーのような機械を使って、体の中で胆石をある程度まで小さく砕いてから取り出す方法もあり、適応範囲が広がってきているようです。また、開腹手術だと、15~20cmほど切らなければいけないため、縫合は絹糸で行われ、抜糸も必要ですが、腹腔鏡下摘出術であれば、へそに1、2cm程度の切り口なので、ボンドのようなもので傷口を塞ぎ、抜糸の必要もありません。

胆石溶解療法

胆嚢を切除・摘出しない方法で行う胆石の治療法としてまず挙げられるのが、この胆石溶解療法です。
これは、内服薬を使って胆嚢内の胆石を溶かしてしまうという方法なのですが、ウルソデオキシコール酸という熊の胆と同じ成分を持った薬を服用し、胆嚢から出される胆汁酸の量を増やして、コレステロール胆石を溶かしていくというメカニズムです。
しかし、この方法は治療にとても時間がかかり、また、コレステロール胆石以外には効果がなく、さらに、食生活に改善が見られない場合に、効果があまり出ないケースもあって、薬の投与だけの治療法では、完全に体から胆石を消す事は難しいとも言われています。
ですから、いくら薬を飲んでいるからといって安心して、以前と変わらない生活をしていたのでは、例え一時的に胆石が小さくなったとしても、薬をやめてしまえば、必ず再発してしまうという事になります。
前にも話したとおり、人によってはコレステロールを分解する力が弱い人もいて、周りと同じ食事をしていても、自分にだけ胆石になってしまう人だっています。自分はどうなのか、主治医に相談し、一番自分に合った治療法を見つけることも大切なのです。

胆石破砕療法

もう一つ、胆嚢を残したまま行う胆石の治療法があり、それがこの胆石破砕療法なのですが、先ほど腹腔鏡下胆嚢摘出術でお話した、体に空けた小さな穴からミキサーのような機械で胆石を砕く方法とは別に、体にメスを入れずに体外から衝撃波を与えて医師を砕くというものがあって、これがそれにあたります。
この胆石破砕療法を使えば、体に傷をつけることなく体内の胆石だけを砕く事ができます。
しかしこの治療を受けるためには、様々な条件をクリアしていなければならなく、制約の多い治療方法になります。例えば、胆嚢炎を併発していないだとか、胆石がコレステロールの場合のみに使える方法だとか、それも胆嚢の中に3つ以下でなければならないなどが上げられます。
また、この方法を使えば、胆石は衝撃波によって破砕され、小さなものになりますが、胆嚢の中にはそれらが残ったままの状態が続きます。したがって、胆石が原因で胆嚢がすでに正常に機能していない場合にも、この方法は適用しません。
そのような事から、実際にこの治療法に適応する患者は、全体の約10%にも満たないといわれています。
この方法は、衝撃波によって胆石を細かく砕き、消化器官へ押し出して体外へ出すことによって、胆嚢の機能の回復を試みるという目的なのですが、胆嚢の結石、すなわち胆石は、腎臓などにできる結石に比べ、排出しにくいという特徴もあり、破砕しただけでは完全に体内から胆石を消し去る事は難しいようです。
ですので、薬による溶解療法と併用して行われる事が多いといわれています。

溶解・破砕併用療法

この溶解・破砕併用療法は、それぞれの治療の利点を生かして、お互いの欠点を埋め合わせ、より効率よく胆石を体から無くすことを目的とした治療法になります。
前に述べたように、溶解療法では、胆石が溶けるまでに非常に時間がかかってしまうため、その間の食生活次第では、効果が弱い、もしくは全く効き目がでないという欠点を持っており、破砕療法も衝撃波で砕いた胆石が外に排出しづらいため、体内に残ってしまいうという悩みをもっていました。
そこでこの療法を併用して治療を行う事によってスムーズに胆石を無くす事ができると考えられているのです。
具体的には、破砕療法によって小さく砕いた胆石を、溶解療法による薬の投与で溶かすという内容になります。これによって、大きすぎて溶けにくかった胆石は溶けやすく、また破砕したけれども外に排出しきれなかった胆石は薬で溶かす、といったようにお互いが助け合った治療で、それぞれを単体でおこなうよりも効率的だといえるため、双方を合わせて行う溶解・破砕併用療法が現在では多く利用されているようです。