胆石と食事

近年、検査などで胆石が見つかると、胆石ごと胆嚢を摘出してしまうという流れが強くなってきているようですが、その背景には、胆石の最大の原因は胆嚢だと考える医師が増えてきていることや、腹腔鏡下摘出術などの内視鏡を使った外科手術の著しい発展などがあげられ、また胆石があると胆のうがんを引き起こしやすいというデータも出てきたようで、その結果巨悪の根元は無くしたほうがいいという風潮が強くなっているようです。

もちろん、胆嚢の摘出が最善のケースも多々あり、この流れが間違っているとは誰もいうことはできません。しかし、胆嚢を切除する事によって、確かにコレステロール胆石はできなくなりますが、その他に様々な弊害が起こる危険性もあり、胆嚢をとったから全て安心というわけではない事も事実です。
ですからやはり、一番大事なことは、胆石を作らないことで、そうならないための予防策に最も注目するべきだと私は考えます。

その昔、明治から昭和初期の日本において、コレステロール胆石はほとんど見られなかったというお話はさせて頂きましたが、現在の日本人の胆石はそのほとんどがコレステロール胆石です。
この事実からも、食生活と胆石は非常に深い関係があり、決して切り離して考える事のできない問題であると言い切ることができるのです。
ではどんな食べ物が胆石になりやすく、またどんな食べ物が胆石の予防になるのかを考えていきましょう。

胆石と脂肪

脂肪の過剰摂取は胆石を作る大きな要因の一つだといわれていますが、特に飽和脂肪酸を含むものには注意が必要です。これは一体どういうものかというと、動物性脂肪に多く含まれるもので肉や魚、それからマヨネーズや中華料理、てんぷらやうなぎの蒲焼などといったものの過剰摂取は避けることをお勧めします。
日本人が一日に摂取する脂肪摂取量の平均は30~40gが適当といわれ、それに加えてたんぱく質が80g、カロリーにして2200kcalが良いとされています。このため、脂肪の取りすぎを気にしすぎるあまり、たんぱく質や、全体のエネルギーが足りないと、コレステロール胆石は避けることができても、今度はビリルビン胆石になる危険性が高まるため、不飽和脂肪酸が多くてたんぱく質のあるいわし、それから大豆やインゲン、食用油で言えば、オリーブオイルや植物性の油などは、適度に摂取する必要があると言えます。
ただしこれにも個人差があるので、もともと肥満の方などは全体的に脂肪の摂取を抑え、特に牛肉やラードといったような動物性の脂肪は極力取らないように心がけたほうが良いといえるでしょう。

そのほかにもアルコールやコーヒー、たこ、イカ、たけのこなどの摂取もできるだけ控えたほうが懸命だといえます。それから忘れてはいけないのが糖分です。糖質である砂糖やブドウ糖などは胆石を形成する成分が含まれていると考えられているので、過剰摂取は控えてください。

胆石とコレステロール

胆石の危険性のみに関わらず、コレステロールの過剰摂取は健康を心がけている人にとっては好ましくないといわれています。確かに、胆石もそのほとんどがコレステロールの取りすぎによるものですから、危険性を危惧されるのは当然のことなのですが、単純に摂取したコレステロールと血中のコレステロールの数値が比例しない場合もあることを忘れてはいけません。どういうことかというと、単純に血中コレステロールの数値が上がったからといって、胆汁のなかのコレステロールの量も増えるかといったら層ではないという事です。
ですから、コレステロールばかりを意識するよりも、動物性脂肪の過剰摂取で肥満になっている方は気をつけたほうが良いと思います。これは統計的に見て、コレステロール胆石を持った人には、圧倒的に肥満の方が多く見られ、動物性の脂肪を好む人が多いという報告が、確実に上がっているからです。
しかし、現代の風潮として、特に女性の場合に多く見られるのが、過剰なダイエットによる栄養不足です。こちらも以前にお話したとおり、絶食の時間が長ければ長いほど、胆汁の中のコレステロール飽和度が高まり胆石を作りやすい環境を胆嚢のなかに作りかねません。ですから肥満気味の方は節制を、栄養不足で痩せている方は、適度な食事を規則正しく取る事が大切です。

本当に健康的にダイエットがしたければ、運動をしてください。運動は胆石の予防にも有効だといわれていますので、無理のない適度な運動をすることは大切です。

胆石と肉類

先にも述べましたが、脂肪の摂取を気にするあまり、たんぱく質が不足してしまう事には注意が必要です。すなわち高たんぱく質で低脂肪の食品が胆石予防には良い食品とされているわけですが、目安として次に挙げるものが、たんぱく質が高く、脂肪が少ないものになります。魚介類で言うと、カツオ、スズキ、ヒラメ、カレイ、キス、それからホタテガイ、赤貝、アワビ、芝えびなどが良いとされ、また肉類でいうと鶏のささみ、若鶏胸肉、牛肩肉や子牛のもも肉などが比較的脂肪の少ないものといえるでしょう。
いずれにしてもたんぱく質は、大切なエネルギー源になりますから、効率よく摂取するように心がけましょう。

胆石と食物繊維

胆石と食物繊維の関係には様々な研究がされていて、食物繊維がコレステロール値を減少させることはほぼ間違いなく分かっています。日本人である私達はこの事実を、非常に重く受け取る必要があり、また皮肉にも、この事実を証明する一つの実験結果として使われることもあるほど、私たち日本人の食生活は変わりました。それを食物繊維の摂取量で見てみると、明治時代の日本人は一日に24gほどの食物繊維を摂取していたのですが、これが今では16g程度しか摂取していないそうなのです。
これに加えて食の欧米化が進み、高脂肪でコレステロールをたっぷり含んだ食べ物を多く摂取するようになりました。これではコレステロール胆石の人が増えてしまうも当然の結果といえるでしょう。ですからコレステロール胆石を防ぐためには食物繊維を含んだ野菜を沢山取る事をお勧めします。ですが気をつけなければいけないことは、せっかく野菜をとっても沢山油を使った野菜炒めや精進揚げ、てんぷらだったり、生野菜を食べるときもマヨネーズやドレッシングを大量に摂取していたのではあまり意味がありません。
ですから野菜を食べるときは、酢味噌やごまなどとあえて食べたり、加熱する際には油を使わずに煮物にして食べたほうが良いといえるでしょう。

規則正しい食生活を

最後に、胆石の予防、それからもうすでに胆石になってしまった人両方に言えることですが、基本的に規則正しい生活を送る事が胆石だけに関わらず、健康な生活を送るために、何よりも大切なのです。ですから、食生活で言えば毎日なるべく決まった時間に3食しっかり食事をし、またその際には、早食いはやめて、咀嚼をしっかりして消化を良くしてください。
よくかんで食事をすることは消化を助けるだけでなく、食べすぎを防ぐ役目も担っていますので、ぜひお勧めしたいものです。
胆石は、食べ物によりできて、食べ物によって消えるといわれているほど、食事と密接な関係を持った病気です。皆さんの心がけ一つで予防や治療に役立つ生活ができるものなのです。しかし、忙しい毎日に追われて、ついついそこに目を伏せがちです。
ですから、今ここをご覧になっている方の中で、一人でも多くの人が、胆石は決して怖いものではなく、自分達で十分に防げるものなのだ。そう思っていただき、また現在胆石で苦しんでいる方も、この病気を理解する事で、少しでもこの日本から胆石に苦しんでいる人がいなくなる日が来ることを願っています。